2020年7月10日

【共同研究4/5/6】「高齢者のQOL 向上のためのコミュニティ活動のファシリテーション」グループ

                            

【共同研究4/5/6】「高齢者のQOL 向上のためのコミュニティ活動のファシリテーション」グループ

 この共同研究グループでは、超高齢社会を支えるコミュニティ活動について、参加者のQoL の向上に資するような効果的なプログラムや、住民が主体となって取り組むための適切なファシリテーション方法に関する研究を続けてきた。2019 年度は、前年度から継続して、千葉県柏市豊四季台地区にある、「地域活動館(仮称)」をフィールドに活動を行った。
 2018 年2 月に、東京大学と柏市社会福祉協議会により設置された「地域活動館」では、2019 年現在、25程度の団体やサークルによって、健康づくり、趣味・娯楽、音楽鑑賞などの自主的な企画が開催されている。この運営団体に対する支援が十分なのか、団体同士の連携・協力関係はどのように築かれているのか、団体の代表者へのアンケート調査やインタビュー調査を行った。この結果、毎月1 回開催している情報交換会の位置付けの見直しや、共同での企画の呼びかけを工夫することによって、団体間の連携を生み出すマネジメントが課題であることが示された。
 また、延べで月間500 名を超える利用者が、どのようなニーズによってこの施設を利用しているのか、利用によるQoL 向上の効果はあるのかについても、利用者に対するアンケート調査を実施した。解析は途上であるが、高齢になるほど、館外での活動範囲は狭くなる一方で、活動館での活動数は増加し、総体として人間関係が維持されていること、活動の種類によって充足するニーズが異なることなどが明らかになっている。
 さらに、この活動館という場で、参加者の間にどのような相互作用が生じ、このことが人間関係の構築や、QoL の向上にどのようにつながっているのかを明らかにすることを目的に、映像分析も前年度に続いて実施した。1 秒ごとのタイムラインを作成した分析により、ファシリテーターの働きかけや座席配置によって、会話の広がりが生まれるといった新たな知見も得られている。
 これらの分析だけでなく、大学院生自らが、分析の結果を活かして、企画を立て実施するアクション・リサーチを重視しているのがこのグループの特徴である。2019 年度は、高齢者の「食事」に焦点を当て、7 月の団地における夏祭りや、10 月の一人暮らし高齢者の昼食会に参加し、フィールド調査を行った。この上で、食事のバランスにも影響を与える「朝食」に焦点を当てた新たなプログラム「あさのばカフェ」のプレ調査
も行った。
 2019 年度は、以上のような多くのフィールド調査や、アクション・リサーチに取り組む一方で、GSA やIAGG、日本社会学会、老年社会科学会といった関係する諸学会で研究成果も積極的に公表した。フィールドに根ざした細かな知見を丹念に蓄積しつつ、それをジェロントロジー(老年学)の学問体系の中に位置付け
ていくという作業に、今後も積極的に取り組んでいくことにしたい。
(特任助教・荻野亮吾/特任研究員・高瀬麻以)
夏祭りにおける活動の様子

夏祭りにおける活動の様子


一人暮らし高齢者の集いにおける活動の様子

一人暮らし高齢者の集いにおける活動の様子