2020年7月10日

ケア・システム実習型フィールド演習:対人ケア実習リポート

<2019.11~2020.2 ケア・システム実習型フィールド演習:対人ケア実習リポート>

 実践的課題解決能力を養うために、医療や介護を必要とする高齢者の生活実態や、医療や介護サ
ービスの実際を把握することを目的に、介護予防や介護サービスの見学、訪問診療・訪問看護に同行する実習型のフィールド演習を行った。
 実習前、他分野の学生でチームとなり、各自で参加目標を立案し、その目標をチームメンバー間で共有した。実習では、介護ニーズのある高齢者、その高齢者を支える専門職など当事者の思いを捉えた。また、高齢者の地域生活を支える介護・訪問看護・訪問診療の機能を理解し、具体的な課題やその解決策を探索し、自らの専門分野で期待される役割を考えた。
 スケジュールは、下記のとおりであった。
〈目標〉
 ・介護サービスを利用する高齢者と話をして、当事者の思いを捉える。
 ・在宅医療や介護サービスを利用する高齢者を支える専門職などの支援者の機能を考える。
 ・参加目標を立案し、その目標をチームメンバー間で共有する。
 ・多専攻で構成したチームメンバー間で協力して、自らの専攻の役割を発揮し、実習(事前学習とレポート作成も含む)に取り組む。
実習先と日程
実習先 日程
地域包括支援センター 12月 9日(月) 9:00~17:00
12月16日(月) 9:00~17:00
小規模多機能型居宅介護 11月25日(月) 9:00~17:00
11月28日(木) 9:00~17:00
訪問看護ステーション 1月20日(月) 9:00~17:00
2月10日(月) 9:00~17:00
2月19日(水) 9:00~17:00
看護小規模多機能型居宅介護 1月20日(月)14:00~17:00
2月10日(月) 14:00~17:00
2月19日(水) 14:00~17:00
訪問診療 12月5日(木)13:00~16:00
12月23日(月)13:00~16:00
1月6日(月) 13:00~16:00
〈コース生の感想〉

湖上碩樹(工学系研究科精密工学専攻 博士1年)

 今回の実習で私は小規模多機能型居宅介護、訪問看護ステーション、看護小規模多機能型居宅介護の三ヶ所を見学しました。私の専門領域はリハビリ工学や福祉工学で、そのような領域に携わる研究者が良く言われるのは「現場を知るのが重要」ということです。現在、介護者を支援するパワースーツや認知機能を支援する見守りロボットなど福祉機器は数多く開発されています。そのため、介護の現場で福祉機器がどのように使われているのかを探りたいと思いましたが、実習先では福祉機器が多く使われていないという印象を受けました。職員の方々との会話の中で、介護の全てを機械に任せるのではなく自らの手を使って介護を行うことが求められていることが分かりました。福祉機器を使う人々が何を求めているかを把握して機器を開発するのが重要であり、これがつまり「現場を知るのが重要」ということを表していることに気づけました。今回の実習により介護の現場を見ることができたのはとても貴重な経験となりました。

日隈脩一郎(教育学研究科総合教育科学専攻 修士2年)

 ギリガンの「ケアの倫理」、ハイデガーが人間存在の根本に見いだした「気遣いSorge(英語ではCare)」など、教育学においてもケアはしばしば議論の俎上に載ります。眼前の他者の固有の情況に応答することが、その根幹と言えますが、では、看護の場合のケアとは一体いかなるものなのか。訪問看護に同行して気付いたのは、ケアの営みがすぐれて暗黙知に支えられているということでした。聴診、検温、爪切り、耳かき、マッサージといった、それ自体は代行が可能な行為の淡々とした連続の中で、患者の呼吸音や息遣い、目の色、皮膚の弾力や温かさといった兆候をいわば「聴き取る」こと。それは、日常的な患者さんとの関係構築はもちろん、確かな専門知がなくしては為し得ないでしょう。とすれば、属人的とも言えるようなケアの営みは、制度としていかに担保され得るのか。これはほかならぬ教育現場においても頭をもたげる問いであり、ここに看護学と教育学の共通の課題を見たような気がしました。