2020年7月10日

【共同研究7】「在宅高齢者のためのIoT 活用による自立支援」グループ

                            

【共同研究7】「在宅高齢者のためのIoT活用による自立支援」グループ

 超高齢社会においては、さまざまな情報技術を活用した安心・安全な社会形成が期待されている。一方で、AI スピーカやIoT(Internet of Things)の普及により、一般家庭におけるインターネットを通した情報通信のあり方は急速に変化している。本グループは、昨年度の活動で高齢者支援技術としてIoT が利活用できないか検討を行った。本年度は昨年度に引き続き高齢者支援技術としてIoT を利活用する方策を検討した。
 昨年度は、支援技術をIoT に絞り、「困りごと」や受容性に関する調査を実施した。調査方法は、高齢者が自由に意見やアイデアを出せるようにワークショップを用いた。内容を変えつつ合計3 回のワークショップを実施した結果、IoT を利活用して解決できるニーズがあり、また高齢者自身がIoT を用いた簡単な解決方法を実現させることができ、IoT システムを受容することがわかった。一方で、欲しい機能の言語化方法やユーザインタフェースの操作に課題が残ったので、本年度は「欲しい機能の言語化方法の検討」と「欲しい機能を具体化するための高齢者向けユーザインタフェースの検討」を行った。
 「欲しい機能の言語化方法の検討」は、昨年度実施したワークショップの内容を精査し、高齢者が欲しい機能を主体的に発想することが可能かどうかの検討を行った。昨年度実施したワークショップでは高齢者からIoT を用いた100 以上のアイデアを得ることができた。得られたアイデアはファシリテーターやテーブルアシスタントの助けの要因や、自身の体験に基づいているかなどを考慮するために、多重ロジスティック回帰を用いて分析を行った。その結果、高齢者自身が主体的にIoT を用いた「困りごと」を解決するアイデアを発想できることがわかった。
 「欲しい機能を具体化するための高齢者向けユーザインタフェースの検討」は、検討したアイデアをIoT システムに実装するためのユーザインタフェースとして、どのようなインタフェースが適しているかの検討を行った。アイデアは、条件と動作の2 つの要素から成り、2 枚のカードに落とし込まれている。IoT システムに伝えるためには、「カードを画像として認識させシステムが読み取る方法」、「タッチパネルなどで機械へ入力する方法」、そして「カード内容を読み上げて音声をシステムが読み取る方法」などが考えられる。これらの入力方法を検討し、評価するワークショップを実施した。ワークショップでは、高齢者が順番にそれぞれのインタフェースを試し、アンケートでの受容度調査とインタビューによる自由意見を評価した。相関係数などで評価の結果、「カード内容を読み上げて音声をシステムが読み取る方法」による入力の評価が高かった一方で、体験順を考慮した場合はカメラを使い「カードを画像として認識させシステムが読み取る方法」は体験順が後になるほど受容されるという結果がわかった。その結果、本研究では様々なインタフェースを組み合わせつつ、「音声をシステムが読み取る方法」は発音に問題がない高齢者は日常的に利用する受容度は高いが、アイデアをIoT システムとして実装するためのユーザインタフェースとしては、「音声をシステムが読み取る方法」を補助的に利用しつつ、カメラを使って「カードを画像として認識させシステムが読み取る方法」が良いことがわかった。本ワークショップを通じて、高齢者自身が技術を使いこなす、生活に寄り添った自立支援システムの実現可能性の一部について示唆することができた。
(特任研究員・伊藤研一郎)