2020年7月10日

【共同研究1】「高齢者に対する就労支援の在り方について」グループ

                            

【共同研究1】「高齢者に対する就労支援の在り方について」グループ

 近年、人口減少社会を迎え、働く意欲と能力のある高齢者が、その能力を発揮して、希望すればいくつになっても働くことができるような環境整備(制度・政策、企業環境等)が求められている。日本では、高年齢者雇用安定法の改正等、法律の制・改正を通じて高齢になっても働ける機会の提供に取り組んできた。その結果、わが国における高齢者の就業率は最も高い水準にある。さらに2020 年2 月には政府が70 歳までの就業機会の確保を企業の努力義務とする高年齢者雇用安定法などの改正案を閣議決定するなど、何歳になっても働き続けられる社会の実現に向けた取り組みが進められている。しかし、実際に働くことになった高齢
者が、どうすれば働きやすいと感じられるか、職場環境(ハード面とソフト面)をどう整備すれば長く、快適に働くことができるかといった点はあまり議論されていない。そこで本研究では、年齢にかかわらず何歳でも働きやすい職場環境(これを我々は「Age-Friendly Workplace」(AFW)と呼んでいる)をテーマに研究を行っている。2018 年度は、70 歳以上の就業者、高齢者雇用に積極的な企業の人事担当者、高齢者雇用を支援する公的サービスの担当者へのインタビューを実施し、高齢者の希望する「仕事」と、高齢者が現状働いている場所とに、職種、雇用条件等様々な面で乖離があることを理解した。
 そこで本年度は、高齢期に新しい仕事を探す高齢者の求職経験に着目し、高齢者の就業促進要因と阻害要因を検討することを研究目的とし、活動を進めてきた。主な活動内容として、4─6 月は高齢者の働き方に関する論文、報告書、現行制度などを調査、労働政策研究・研修機構の「高年齢者の雇用に関する調査(2015年)」「高年齢者の継続雇用等、就業実態に関する調査(2011 年)」の個票データを入手し分析を行った。これらから、高齢者および企業の持つ課題の類型化を試みた。また、7 月以降は柏市生涯現役促進協議会の開催する、高年齢就業希望者向けセミナーに参加(8 月、11 月、1 月)し、仕事を探している高齢者の参与観察を行った。さらに参加者の中から同意いただいた方への半構造化インタビューを実施(11 月、1 月、2 月)し、過去の経歴から現在の求職または就職の状況までを時系列で分析することで、何が求職および就業の促進阻害要因になっているかを検討した。それらの結果をGLAFS の国内シンポジウム(2020 年3 月)で発表した。インタビュー結果をまとめ、個票データの2 次分析とともに論文化を目指している。
(特任講師・菅原育子)