2019年9月10日

【共同研究4/5/6】「高齢者のQOL向上のためのコミュニティ活動のファシリテーション」グループ

                            

                            

【共同研究4/5/6】「高齢者のQOL向上のためのコミュニティ活動のファシリテーション」グループ

 この共同研究グループでは、超高齢社会を支えるコミュニティ活動について考えるために、参加者のQoL の向上に資するような効果的なプログラムや、住民が主体となって取り組むための適切なファシリテーション方法に関する研究を続けてきた。2018年度は、主たる活動として、千葉県柏市豊四季台地区において、住民主体の「通いの場」である「地域活動館(仮称)」の活動の検証を行った。
 2018年2月に、東京大学と柏市社会福祉協議会により設置された「地域活動館」では、現在、約20の住民が主体となった運営団体によって、健康づくり、趣味・娯楽、音楽鑑賞などの自主的な企画が、定期的に開催されている。これらの企画に、高齢者がどのような動機で参加しているのかについて、2018年7月に利用者約30名を対象とするインタビュー調査を行った。環境心理学の概念であるPlace Attachmentの理論に基づいて分析した結果、活動館は、自宅から出るという目的達成のために気軽に利用され、友人と会う場として積極的に活用されていることが明らかになった(2019年10月のIAGGで発表予定)。
 次に、この活動館という場で、利用者の間にどのような相互作用が生じ、このことが人間関係の構築や、 QoLの向上にどのようにつながっているのかを明らかにすることを目的に、9月より映像分析、2019年2月より、プログラムの参与観察を実施している。映像を用いた、習字の取り組みに関する会話分析からは、共通の課題に取り組むことを通じて、利用者の間に自然と会話が生まれている様子が明らかになった(2019年 6月の日本老年社会学会で発表予定)。また、参与観察では、プログラムによりQoLの向上につながる道筋が異なる可能性が示唆されている。
 これらの調査に加えて、住民主体の運営へと移行していくためには、初期に策定したガイドラインの改定や、マニュアルの作成も必要になる。そこで、2019年2月からは、運営団体の役員に対して、利用の満足度や課題認識について尋ねるインタビュー調査に着手した。運営団体のタイプによって、直面する課題や必要な支援内容も異なる、というのが現時点の調査仮説である。
 2019年度は、以上の調査結果に基づき、院生が組み立てた企画についても、随時実施をしていく予定である。また、これまでの研究成果を体系化し、コミュニティ・スペースの空間設計・プログラムの企画・評価方法などに関する指針を提示していくこととしたい。
(特任助教・荻野亮吾/特任研究員・高瀬麻以)
GLAFS2018共同研究456
教員・院生が企画した多世代交流のゲーム企画の様子