2018年5月25日

【共同研究1/2「在宅介護で暮らし続けられる条件の検討」グループ】

                            

【共同研究1/2「在宅介護で暮らし続けられる条件の検討」グループ】
要介護高齢者の居住地選択要因 ──施設入居者を対象として──

近年、我が国では、要介護期にある高齢者やその家族の「本人・家族の選択と心構え」(厚生労働省;2013)をサポートする地域包括ケアシステムが推進されている。また、要介護期にある高齢者が居住地を選択する際のサポートでは、高齢者自身の心身の状態、家族関係、経済状況、居住環境、サポートやサービスの環境、地域住民との関係など、複合的な要因を理解する必要がある。しかし、要介護の高齢者や家族の当事者の視点による、要介護期の居住場所や介護サービス選択の要因は十分に明らかにされていない。
そこで、今年度は、高齢者・家族・支援者の3者の視点から、要介護期にある高齢者の居住地の選択に影響を与える複層的な要因を明らかにすることとした。また、Dahlgren & Whiteheadのモデル(1991)を参考に、①個人(本人の健康状態の変化、身体機能低下、行動障害、経済状態)、②本人が築いてきた個人的ネットワーク(家族・友人・ご近所づきあいなどの関係性)、③住居などの生活状況(改修の有無、滞在場所の変化)、④地域環境・サービス提供体制(各種サービスの種類やその組み合わせ、地域にある資源など組織化・システム化された要素)、以上の4つの構成要素を探索する。そのため、1)要介護者に介護サービスを提供している専門家(ケアマネジャーや訪問看護師など)、2)自宅で生活する要介護者をサポートしている家族や支援者(インフォーマルなケア提供者を含む)、3)施設で暮らしている要介護の高齢者・家族・ケアマネジャーに対して、要介護期において高齢者の居住地の選択に影響を与えた要因について、フォーカスグループインタビュー、あるいは個別にインタビューを実施した。その結果、要介護の高齢者が住み慣れた自宅から施設に入居する経過において、①個人、②本人が築いてきた個人的ネットワーク、③住居などの生活状況から、居住地の選択に関わる主要な要因を抽出し、整理した。一方、④地域環境・サービス提供体制に関わる要因の検討は十分ではなかった。そのためには、直接、施設に入居している要介護の高齢者にアプローチするなどして、4つの構成要素を総合的に検討することも必要となってくるであろう。
(特任助教・木全真理)