IARU International Symposium on Agingリポート
<IARU International Symposium on Agingリポート> |
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IARU Aging, Longevity, and Health Initiative (国際研究型大学連合 エイジング・長寿・健康に関する研究ユニット)が1年おきに開催する大学院生会議が、11/3-5の3日間、東京大学本郷キャンパスで開催されました。 この会議に関連して、11/3には、公開シンポジウム「Society for 2050: What Science and Technology Can Do to Build a Dynamic Aged Society」が、福武ラーニングシアターで開催されました。 シンポジウムでは開会の挨拶に続いて、オックスフォード大学サラ・ハーパー教授が世界の人口構造の変化と、それに伴い高齢化した社会が直面している課題について講演をしました。平均寿命(Life Expectancy)だけでなく健康寿命(Healthy Life Expectancy)と合わせて読み解くことの重要性、社会の中での格差が大きな問題を生み出していることなど、人口の超高齢化がすすむ諸国が直面する課題を指摘する内容でした。 続いて、東京大学大学院情報理工学研究科廣瀬通孝教授が、近年の情報工学の発展と、その技術を高齢社会で活かす可能性について講演をしました。シニアが社会で活躍する機会を支援したり、生涯にわたる健康づくりを支援する、新しいテクノロジーの姿が紹介されました。 後半のパネルディスカッションでは、4名の研究者が話題提供を行いました。コペンハーゲン大学のLene Juel Rasmussen教授は、コペンハーゲン大学の学際的なエイジング研究所であるCenter for Healthy Aging(CEHA)の取り組みを紹介されました。CEHAがHealthy Agingの理解と実現を目標に据えて活動していること、そして現在取組んでいる課題やプロジェクトが紹介されました。 北京大学のXiaoying Zheng教授からは、中国における人口高齢化の現状と、特に障がいを持つ高齢者層の増加が社会にもたらすインパクトについて紹介がありました。また、北京大学に設置されたAPEC健康科学研究所の取り組みを紹介していただきました。 東京大学先端科学技術研究センターの檜山敦講師からは、大学、企業、自治体の共同で進められた、中高年女性の虚弱予防のためのプログラムの紹介をしていただきました。プログラムではバーチャルリアリティ技術を用いることでより効果的な虚弱予防が実現する可能性が示されました。 最後に、カリフォルニア大学バークレー校のDavid Lindeman教授が、カリフォルニア大学各校の連携で進められているCITRIS and the Banatao Instituteという学際科学技術研究プログラムを紹介しました。企業、大学、コミュニティが一体となって、研究、発明、導入を牽引する取り組みの紹介と、そこで取り組まれている課題の中でも高齢化や健康は最も大きな課題の一つであり可能性でもあるということが、紹介されました。 ディスカッションでは、年齢にかかわらず働き続けられる社会をめざす世界各国の流れについて、シニアが働き続けることによる健康への効果や社会へのインパクト、高齢者の社会参加を支える技術の可能性について、パネリストが様々な意見を出しあいました。 フロアからは、少子化の問題や、親の介護を巡る世代間の対立の問題など、若い世代からの問いが多く発せられました。高齢化は現在高齢の人々の話にとどまるものではなく、社会全体、人類全体の課題である、誰もが自分の世代の問題として高齢社会の課題と可能性を読み解く必要がある、といった指摘が登壇者から発せられました。(菅原育子特任講師) |
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参加したGLAFS生からの感想
麦山 亮太 人文社会系研究科社会文化研究専攻博士課程Sarah Harper先生の人口学・公衆衛生に関する講義、なかでもとくに、社会経済的不平等はたんに寿命のみでなく健康寿命の長さにも影響を及ぼすという点が印象的だった。たんに健康への影響といっても、複数の指標を取りながら研究することで政策的・理論的な含意もさまざまに異なりうる、ということに注意しながら今後研究を進めていきたい。 小松 廉 工学系研究科精密工学専攻博士課程廣瀬先生の講義を聞いて、高齢化が進む中、テクノロジーというのは他のアプローチでは成しえない解決策を提供しうる素晴らしいものだと実感した。また、中国における年代別、身体障がいの割合についてのグラフが非常に興味深く感じた。 |
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IARU Aging, Longevity, and Health Initiative (国際研究型大学連合 エイジング・長寿・健康に関する研究ユニット)が1年おきに開催する大学院生会議が、11/3-5の3日間、東京大学本郷キャンパスで開催されました。 この会議に関連して、11/3には、公開シンポジウム「Society for 2050: What Science and Technology Can Do to Build a Dynamic Aged Society」が、福武ラーニングシアターで開催されました。 シンポジウムでは開会の挨拶に続いて、オックスフォード大学サラ・ハーパー教授が世界の人口構造の変化と、それに伴い高齢化した社会が直面している課題について講演をしました。平均寿命(Life Expectancy)だけでなく健康寿命(Healthy Life Expectancy)と合わせて読み解くことの重要性、社会の中での格差が大きな問題を生み出していることなど、人口の超高齢化がすすむ諸国が直面する課題を指摘する内容でした。 続いて、東京大学大学院情報理工学研究科廣瀬通孝教授が、近年の情報工学の発展と、その技術を高齢社会で活かす可能性について講演をしました。シニアが社会で活躍する機会を支援したり、生涯にわたる健康づくりを支援する、新しいテクノロジーの姿が紹介されました。 後半のパネルディスカッションでは、4名の研究者が話題提供を行いました。コペンハーゲン大学のLene Juel Rasmussen教授は、コペンハーゲン大学の学際的なエイジング研究所であるCenter for Healthy Aging(CEHA)の取り組みを紹介されました。CEHAがHealthy Agingの理解と実現を目標に据えて活動していること、そして現在取組んでいる課題やプロジェクトが紹介されました。 北京大学のXiaoying Zheng教授からは、中国における人口高齢化の現状と、特に障がいを持つ高齢者層の増加が社会にもたらすインパクトについて紹介がありました。また、北京大学に設置されたAPEC健康科学研究所の取り組みを紹介していただきました。 東京大学先端科学技術研究センターの檜山敦講師からは、大学、企業、自治体の共同で進められた、中高年女性の虚弱予防のためのプログラムの紹介をしていただきました。プログラムではバーチャルリアリティ技術を用いることでより効果的な虚弱予防が実現する可能性が示されました。 最後に、カリフォルニア大学バークレー校のDavid Lindeman教授が、カリフォルニア大学各校の連携で進められているCITRIS and the Banatao Instituteという学際科学技術研究プログラムを紹介しました。企業、大学、コミュニティが一体となって、研究、発明、導入を牽引する取り組みの紹介と、そこで取り組まれている課題の中でも高齢化や健康は最も大きな課題の一つであり可能性でもあるということが、紹介されました。 ディスカッションでは、年齢にかかわらず働き続けられる社会をめざす世界各国の流れについて、シニアが働き続けることによる健康への効果や社会へのインパクト、高齢者の社会参加を支える技術の可能性について、パネリストが様々な意見を出しあいました。 フロアからは、少子化の問題や、親の介護を巡る世代間の対立の問題など、若い世代からの問いが多く発せられました。高齢化は現在高齢の人々の話にとどまるものではなく、社会全体、人類全体の課題である、誰もが自分の世代の問題として高齢社会の課題と可能性を読み解く必要がある、といった指摘が登壇者から発せられました。(菅原育子特任講師) |
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参加したGLAFS生からの感想
麦山 亮太 人文社会系研究科社会文化研究専攻博士課程Sarah Harper先生の人口学・公衆衛生に関する講義、なかでもとくに、社会経済的不平等はたんに寿命のみでなく健康寿命の長さにも影響を及ぼすという点が印象的だった。たんに健康への影響といっても、複数の指標を取りながら研究することで政策的・理論的な含意もさまざまに異なりうる、ということに注意しながら今後研究を進めていきたい。 小松 廉 工学系研究科精密工学専攻博士課程廣瀬先生の講義を聞いて、高齢化が進む中、テクノロジーというのは他のアプローチでは成しえない解決策を提供しうる素晴らしいものだと実感した。また、中国における年代別、身体障がいの割合についてのグラフが非常に興味深く感じた。 |
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