2016年7月28日

国際交流特別セミナー「高齢期・超高齢期のウェルビーイングを考える」リポート

<国際交流特別セミナー「高齢期・超高齢期のウェルビーイングを考える」リポート>

米国ミシガン大学教授(兼GLAFSプログラム教員)のToni Antonucci教授の来日に合わせて、2016年7月28日に、国際交流特別セミナー「高齢期・超高齢期のウェルビーイングを考える:心理、社会、コミュニティからのアプローチ」(Well-being in the third and fourth age)が開催されました。
前半のアントヌッチ先生の講演は” Convoys of Social Relations in Context: A focus on Japan, Lebanon, Mexico and U.S.”という演題で、先生が1980年から提唱してきた社会関係の生涯発達理論である「コンボイモデル」についてお話しいただきました。先生の研究チームが日本、アメリカ、レバノン、メキシコで行った調査データが紹介され、私たちの社会関係、そしてウェルビーイングに、文化や社会制度がいかに関わっているかが論じられました。
後半は、日本の若手研究者3名が、高齢者の他者や地域との関わりとウェルビーイングとの関係について、また高齢者を支えるコミュニティづくりの実践について、最新の研究報告をしました。アントヌッチ先生、アントヌッチ先生の配偶者であり自身も老年学の研究者であるミシガン大学ジェイムス・ジャクソン先生から、多くの質問やコメントが投げかけられました。身体機能が低下した時、経済的に困難な時、大きな災害で生活変化を余儀なくされた時、いかに地域社会や周囲の他者が私たちを支えるかという、共通のテーマが浮き彫りになりました。学内外から参加した多くの方の参加により、時間を超過しての活発な議論が交わされました。(特任講師 菅原育子)

 

参加した学生のリポートから抜粋

長谷田真帆 医学系研究科・社会医学専攻 博士課程3年(MD3)

Antonucci先生のご講演では、高齢者の社会関係に関するConvoy modelについての説明はとてもわかりやすく、勉強になりました。また年齢や地域によって高齢者の社会関係がどのように異なるのか、という問いを検証した、日本・アメリカ・メキシコ・レバノンの4国間の比較研究の方法や結果は大変興味深いものでした。
国内の研究者の方々からは、各地域でのパネル調査等についてのご発表を伺うことができました。川崎市での調査では、目に見えない社会的ネットワークが虚弱高齢者において精神的健康に保護的に作用していた、という結果をお示し頂きました。また神戸市の調査では、特に女性において、地域への愛着や強固な人間関係が、経済的・身体的に不利な状況が精神的健康に与える悪い影響を緩和している、というご発表がありました。被災地である岩手県大槌町では、仮設住宅の住環境点検がその後の地域活動へ繋がった事例や、地域によって自主的な活動が活発な仮設住宅とそうでない仮設住宅に経時的に分かれていく、といった調査結果についてご報告を頂きました。
いずれの方のご発表も非常に興味深く、多面的に高齢者のwell-beingを捉えていたワークショップだったと思います。自分の研究にもヒントを頂くことができました。

20160728 セミナーの様子
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